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■食物アレルギー治療の臨床研究で、子供が一時心肺停止に 神奈川県立こども医療センター

 

 横浜市にある病院で、食物アレルギーを治療する臨床研究に参加していた子供が、重いアレルギー症状を起こして一時、心肺が停止し、現在も治療を受けていることがわかりました。

 病院は「最善の努力をもって対応していく」としており、専門の学会は同じような事例が起こっていないか、全国の医療機関を対象に緊急の調査を始めました。

 食物アレルギーでは、原因となる食べ物を少しずつ食べることで治す「経口免疫療法」という治療法があり、横浜市にある神奈川県立こども医療センターでは、患者200人に対して入院させて安全を管理した状態でアレルギーの原因の食べ物の摂取量を徐々に増やし、退院後も一定量の摂取を続ける「急速法」と呼ばれる臨床研究を行っていました。

 神奈川県立こども医療センターによりますと、今年、この臨床研究に参加していた牛乳アレルギーの子供が、入院を終え医師の指導のもと、自宅で牛乳を飲み続けていましたが、およそ3カ月が経過して牛乳を飲んだ直後に重いアレルギー症状が現れ、一時、心肺が停止して脳に障害が出て、現在も治療を続けているということです。

 神奈川県立こども医療センターは、臨床研究に参加しているほかの患者に対し、変化があればすぐに連絡するよう注意を促すとともに、緊急時の対処法も改めて周知した上で、「患者様・ご家族様のお心を察するに余りあるものがあります。この事態に取りうる最善の努力をもって対応してまいります」としています。

 また、専門医で作る日本小児アレルギー学会にも報告され、学会では、食物アレルギーの診療を行っている全国330の医療機関を対象に、治療や実際に食べ物を食べて行う検査などの過程で、呼吸困難になるなど気道を確保する緊急対応が必要になった事例や、集中治療室で治療を行った事例、それに脳の障害など重い症状が出た事例がないか緊急の調査を始めました。また、後遺症が残ったかどうかも調査し、それぞれのケースの共通点などから、原因を検討していくということです。

 調査を行う国立病院機構相模原病院の海老澤元宏医師は、「どれくらい重篤な事案が発生しているのかその実態はよくわかっておらず、調査を通じてどこに問題があったのかや避けられることなのかなどを検討したい。臨床研究を行う施設には改めて安全を担保した上で取り組んでもらいたい」と話しています。

 食物アレルギーは、卵や牛乳、小麦などの食べ物を摂取することで、皮膚や呼吸器などのさまざまなところにアレルギーの症状が現れるものです。発症する患者の数は年齢が0歳の時が最も多く、その後、成長に伴って低下するとされており、過去の研究では、乳児の5%から10%に食物アレルギーの症状が出たと報告されています。

 そして、成長するのに伴って自然によくなる人もおり、それまでの間、医師などによる「栄養食事指導」という方法が一般的に行われています。この方法では、アレルギーの原因となる食べ物を症状が出る量以上は摂取しないようにして、不足する栄養などについては、指導を受けて別な食材で補うようにします。

 一方、食物アレルギーを積極的に治療する方法として試みられているのが、経口免疫療法と呼ばれる治療法です。成長の過程でアレルギーの症状が早期によくなることが期待できない患者に対して行われるもので、少しずつ食べる量を増やしながら耐性をつけ、症状を出さずに上限を増やしていく方法です。

 専門家によりますと、経口免疫療法は世界でも日本が先進的に取り組んでいる治療法で、2年前の2015年の時点で全国でおよそ8000人の患者が治療を受けているという報告があります、この経口免疫療法の中には食べる量を増やす初めの段階で、ゆっくりと量を増やす「緩徐法」や、急激に増やす急速法など複数の方法があるとされています。

 日本小児アレルギー学会の診療ガイドラインでは、一部の症例に効果があるとする一方、治療中に全身に症状が出るアナフィラキシーなどの重篤な症状が出ることがあるほか、治療が終わった後に症状が出る場合もあるなどの問題があるとされ、一般診療としては推奨されていません。

 このため学会では、この経口免疫療法を行う場合は、食物アレルギー診療を熟知した専門医が行うことや、症状が出た場合の救急対応の準備をしっかりと行っていることなどを条件に、臨床研究として慎重に行うことを求めています。

 

 2017年11月13日(月)