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■建設現場でのアスベスト被害、国とメーカー4社に賠償命じる 高裁初判断

 

 建設現場で建材に含まれるアスベスト石綿)を吸い込んで、肺がんなどの健康被害を受けたとして、神奈川県の元建設労働者と遺族計89人が国と建材メーカー43社に約28億8000万円の損害賠償を求めた集団訴訟控訴審判決が27日、東京高等裁判所でありました。

 永野厚郎裁判長は原告敗訴の一審判決を変更し、国とメーカー4社に対し、原告62人に総額約3億7000万円を支払うよう命じました。

 全国14件の同種の集団訴訟で初の高裁判決。国とメーカーのいずれにも賠償を命じる判決は2016年1月の京都地裁、10月24日の横浜地裁(第2陣)に続いて3件目で、双方の責任を認める流れが定着する可能性もあります。

 永野裁判長は判決理由で、1980年前後には医学的知見が集積し、国が重大な健康被害のリスクを把握できたと指摘。「遅くとも1981年までに防じんマスクの着用を義務付けなかったのは違法」と結論付け、原告44人に対し約2億3000万円を支払うよう国に命じました。

 メーカーの賠償対象は、大工や塗装工などとして働いていた元労働者、その遺族ら39人。判決は「メーカーにはマスクの使用を警告する義務があった」とし、4社に計約1億4000万円の賠償を命じました。国、メーカー双方の賠償対象となった原告は21人。

 建設労働者は現場を次々と移るため、健康被害が生じた原因の特定が難しいものの、永野裁判長は「的確な証拠で建材を特定できない場合、建材の市場シェアなどから推定することに合理性がある」と判断。個々の原告について、建材のシェアや作業回数から実際に現場でアスベストが使われた確率を推定し、メーカーの責任を認めました。

 4社はエーアンドエーマテリアル(横浜市鶴見区)、ニチアス(東京都中央区)、エム・エム・ケイ(東京都千代田区)、神島化学工業大阪市西区)。

 個人事業主の「一人親方」については、法律上の労働者に当たらないとして国の責任を否定。国の責任が生じるよりも前に働いていた原告や、建材と発症との因果関係が不明な原告を含め、27人の請求を退けました。

 厚生労働省は、「厳しい判決と認識している。判決内容を十分検討し、対応したい」と説明。エーアンドエーマテリアルは、「主張が認められなかったことは誠に遺憾だ。上告する方向で検討している」とコメントしました。

 原告らは2008年に提訴。2012年5月の一審・横浜地裁判決は「当時の知見に照らせば国の対応は適法」とし、原告側が全面敗訴しました。その後の地裁判決6件はすべて国の責任を認めましたが、メーカーの責任を巡る判断は分かれていました。

 控訴審はほかに札幌、大阪、福岡などの各高裁でも争われており、今後の結論が注目されます。

 アスベスト健康被害を巡っては、アスベスト工場の元労働者が起こした訴訟が先に進みました。2014年、最高裁が大阪・泉南アスベスト訴訟で「工場に排気装置の設置を義務付ける規制が遅かった」と指摘して国の責任を認め、原告側の勝訴が確定しました。

 国は最高裁の判断に従って、訴訟を起こした人との和解を進めています。9月末時点で236人との和解が成立し、約21億円を支払いました。

 

 2017年10月28日(土)