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■新生児の聴覚検査、約10万人が受けず 産婦人科医会が全国調査

 

 新生児に耳が聞こえないなどの聴覚障害がないか調べるため、国が自治体にすべての新生児を対象に実施を求めている検査について、日本産婦人科医会が全国調査を行った結果、昨年度、回答があった施設だけでも約10万人が検査を受けていなかったことが明らかになりました。

 聴覚の障害は早期に見付けて治療を始めれば影響を小さくできることから、日本産婦人科医会は自治体に対し早急な対応を求めています。

 生まれたばかりの新生児に聴覚の障害があるか調べるため、国は全国の市町村に対して、原則として生後3日以内のすべての新生児を対象に聴覚検査を実施するよう求めています。

 聴覚検査は、新生児にヘッドホンから数分間、小さな音を聞かせ、額やほおに貼った電極で脳波の変化を見て耳が聞こえているか調べます。基本的に出産した施設で実施され、異常が疑われる場合は耳鼻科で精密検査が行われます。

 日本産婦人科医会は全国およそ2400の分娩(ぶんべん)を扱う医療機関を対象に、2016年度の聴覚検査の実施状況を調査し、約76%の施設から回答がありました。

 その結果、回答があった施設で生まれた新生児約73万4000人のうち13・5%に当たる約10万人が検査を受けていなかったことがわかりました。特に北海道、神奈川県、京都府香川県、千葉県、東京都では、20%を超える新生児が検査を受けていませんでした。

 国は全国の市町村に対して2007年に新生児の聴覚検査を行うよう通知し、聴覚検査の費用は公費で補助できるよう地方交付税交付金として渡しています。しかし実際には、2015年度の時点で費用を補助している市町村はわずか6・8%にとどまっていました。9割以上の市町村では、聴覚検査の費用約5000円を自己負担して受けています。

 日本産婦人科医会は、聴覚検査の重要性を広く認識していないことが背景にあり、検査費用を補助している市町村が1割に満たないという実態が、すべての新生児に聴覚検査が実施されていない状況に影響していると指摘しています。

 日本耳鼻咽喉科学会によりますと、聴覚に障害がある新生児は1000人に1人から2人の割合でおり、遺伝子の変異やウイルスの感染などが原因とされています。早期に発見して治療を開始すれば言葉の発達の遅れが最小限に抑えられ、生活への影響が小さくできることから、新生児の時の検査が非常に重要になるということです。

 聴覚障害がある場合には、生後半年以内に補聴器をつけるほか、症状が重い場合は、耳の中に音声を電気信号に変換する人工内耳を取り付ける手術などが行われます。

 日本耳鼻咽喉科学会の理事で東京大学の山岨(やまそば)達也教授によりますと、声を言葉として認識する脳の神経回路は5歳ごろまでに基礎が形成されるため、聴覚障害の発見が遅れてよく聞こえないまま成長すると、その後に音が聞こえるようになっても言葉を聞き取ったり話したりすることがうまくできず、ふだんの生活への影響が大きくなることがわかっています。

 調査を行った日本産婦人科医会の関沢明彦常務理事は、「およそ10万人の赤ちゃんが検査を受けていない深刻な実態が初めてわかった。検査費用が補助されている自治体では実施率が高い傾向があり、市町村は検査の意義を理解し早急にすべての赤ちゃんが検査を受けられるよう制度を整えるなど対策を行うべきだ」と話しています。

 

 2017年8月5日(土)