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■iPS細胞を使った創薬、京大が世界初の治験へ 骨の難病が対象

 

 京都大学iPS細胞研究所の戸口田(とぐちだ)淳也教授らの研究チームは1日、筋肉の中に骨ができる難病「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」の治療薬の候補をiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って発見し、近く臨床試験(治験)を始めると発表しました。

 iPS細胞を使った創薬の治験は、世界で初めてとなります。再生医療と並んでiPS細胞の柱の一つである創薬の分野が、本格的に動き出します。

 対象となるのは、タンパク質の一種「アクチビンA」が異常に働くことで、筋肉や腱(けん)、靱帯(じんたい)などの組織の中に骨ができる進行性骨化性線維異形成症で、200万人に1人の割合で発症し、国内の患者は約80人とされます。今まで、根本的な治療薬がありませんでした。

 治験は、京大付属病院などで実施する予定で、同病院の審査委員会は計画をすでに承認。近く実際の患者に候補薬の投与を始めて、安全性や効果を確かめます。

 投与するのは、既存薬の「ラパマイシン」で、臓器移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤として使われています。研究チームは、進行性骨化性線維異形成症の患者の細胞から作ったiPS細胞をさまざまな細胞に変えて病態を再現し、そこに候補薬を投与する実験などをして、約7000種の物質の中からラパマイシンに絞り込みました。マウスに投与する実験では、病気の進行を遅らせる効果がありました。

 戸口田教授は、「すでにできてしまった骨を取り除くことはできないが、症状をこれ以上悪化させないという効果を確認したい。ラパマイシンはすでに使われている薬。患者に大変喜んでいただけるのではないか」と話しています。

 iPS細胞の応用では、体の組織を作って移植する再生医療創薬が二本柱として期待されています。再生医療では理化学研究所などがiPS細胞から目の細胞を作り、目の疾病の患者に移植する研究をすでに進めています。心臓病や脊髄損傷でも、人での再生医療を目指す研究が進んでいます。

 もう一方の創薬応用では、今回が初めて人に投与する治験となります。iPS細胞が開発されてから約10年がたち、創薬でも人に投与する段階に達しました。

 京大の別の研究チームは、難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)に慢性骨髄性白血病の薬が効果を発揮することを見付けています。京大iPS細胞研究所は武田薬品工業と筋委縮性側索硬化症や糖尿病、がん、心不全筋ジストロフィーなどの分野で、iPS細胞を使う創薬の共同研究をするなど企業を巻き込んだ動きも進んでいます。

 患者の細胞をもとに作ったiPS細胞からは、病気を引き起こす細胞を実際に作り出すことが可能で、患者の体内を再現できることで、新薬を試す実験が進みます。

 京大iPS細胞研究所長の山中伸弥教授は、「ヒトiPS細胞ができて10年の節目に治験開始の発表をできることをうれしく思う。治験を切っ掛けに創薬研究がますます活発に行われ、ほかの難病に対する治療法の開発につながることを期待している」とコメントしました。

 

 2017年8月1日(火)