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■生殖補助医療研究での受精卵作製を国に初申請 大阪市内の民間クリニック

 

 大阪市内の民間クリニックが不妊治療のため、未成熟の卵子を体外培養して受精卵を作り、どの条件なら受精率が向上するかを調べる基礎研究を国に申請していることが明らかになりました。国は生殖補助医療などに限定して、人の受精卵を作ることを認める倫理指針を策定しており、今回は指針に沿った初の申請となります。

 関係者によると、大阪市内の民間クリニックが今年1月、厚生労働省文部科学省に申請しました。両省は31日の審議会で、研究内容が倫理指針に適合しているかどうかの審査を始めます。

 未成熟の卵子を特殊な培養液に入れて受精できる段階まで育て、顕微授精させる技術は「体外成熟培養(IVM)」と呼ばれ、卵子が卵巣内で育ちにくい多嚢胞(たのうほう)性卵巣症候群などの患者を対象に多くの不妊治療クリニックが実施しています。しかし、卵巣内で成熟した卵子よりも受精率や妊娠率が低いといった課題が指摘されています。

 今回の研究では、培養液などの異なる条件で複数の卵子を育て、受精率が高い方法を探る目的があります。

 人の受精卵は倫理的な問題から、研究目的に作ったり実験に使ったりすることは原則禁止されていますが、政府の総合科学技術会議(当時)は2004年、生殖補助医療研究などに限っては容認しました。これを受け、厚労省文科省は2010年、精子卵子は無償提供、作った受精卵を人や動物の子宮に戻さない、受精卵は受精後14日以内に原則廃棄するなどとする倫理指針をまとめました。

 31日から始まる審議会では、研究に協力するカップルのインフォームドコンセント(十分な説明に基づく同意)や、クリニックの研究態勢が妥当かどうかについて検討します。

 不妊治療クリニックで広く実施されている体外成熟培養は、自由診療のため1回当たり10万円程度の費用がかかる一方、妊娠率は通常の顕微授精より低いとされています。今回の研究によって、より効果的な培養手法が確立されれば、不妊に悩むカップルにとっては朗報になります。

 しかし、生命の萌芽(ほうが)とされる受精卵を、生殖目的ではなく研究目的で作ることは、倫理問題をはらみます。国の指針では受精後14日以内に受精卵を廃棄することが定められており、命の可能性を絶ってしまうことになります。

 人の受精卵を研究材料として扱うことが許されるのは、余った受精卵から再生医療に使う胚性幹細胞(ES細胞)を作る研究と、生殖補助医療研究の2つに限られています。前者はすでに多くの研究機関で進められていますが、生殖補助医療研究での申請は今回が初のケース。国民の理解を得るためにも審査の透明性を図る必要がありますが、31日の審議会は非公開で、情報公開の課題も抱えます。

 生殖補助医療に詳しい北海道大の石井哲也教授(生命倫理)は、「生命倫理の問題があり得る研究にもかかわらず、審議を非公開とするのは問題だ」と指摘しています。

 

 2017年7月30日(日)