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■抗がん剤、同じ効果なら安価なほうを使用 日赤医療センターが昨年に続いて決定

 

 がん治療薬「オプジーボ」など高額薬による国の医療費増大が問題となる中、日本赤十字社医療センター(東京都渋谷区)が30日までに、5月に保険適用が決まった抗がん剤「ザルトラップ」(一般名:アフリベルセプト)について、治療で原則使用しない方針を決めました。

 同じ効果で約半額の既存類似薬「アバスチン」(一般名:ベバシズマブ)があり、割高な新薬を使うメリットはないと判断しました。薬価が高いことを理由に医療機関が使用を差し控える決定をするのは、国内では異例とみられます。

 高額な新薬が保険財政に与える影響が問題化したことから、厚生労働省は薬価制度の見直しを進めています。日赤医療センターは医療費の抑制につなげるねらいで、昨年に続く今回の決定は国の薬価制度見直し議論に一石を投じそうです。

 化学療法科の国頭英夫部長によると、日赤医療センター化学療法委員会が昨年5月下旬に、「同じ効果、同じ副作用なら価格が安い抗がん剤を使う」との院内方針を決定。大腸がんの抗がん剤「サイラムザ」(一般名:ラムシルマブ)と「アバスチン」を比較し、価格が高いサイラムザについて、大腸がんの治療に使用しないことも決めました。

 2剤はがん細胞が栄養を得るため血管を引っ張る動きを妨げる効果があり、ほかの抗がん剤と併用します。サイラムザ胃がん用に2015年に発売され、昨年4月、大腸がんに適応拡大。アバスチンは大腸がん用に2007年に承認されており、国頭部長によると「大腸がんに対し、2剤は効果も副作用も変わらない」といいます。

 2剤の価格は体重60キロの患者が半年間使用するとアバスチンが150万円なのに対して、サイラムザは427万円と約2・8倍。そのため、日赤医療センターは「国民皆保険制度のもと、日本では高額薬であっても医師は価格を気にせず処方してきた」と指摘し、「ほかに薬がない胃がんにはサイラムザを使っても、大腸がんでは使わない」としました。

 アメリカではニューヨーク・タイムズ紙が2012年10月、ニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターが、アバスチンと効果や副作用がほとんど変わらない高額な新薬ザルトラップを使わない方針を示したことを報じました。同紙は翌月、「製薬企業がこの1カ月使用すると約100万円の新薬を50%引きして、医療機関に販売する」と報道。新薬ザルトラップの価格はその後、実際に下がりました。

 日本では上限を超えた医療費が医療保険から支給される「高額療養費制度」で患者負担が抑えられることもあり、同じ効果なら安価な薬剤を使うという考えは浸透していません。

 国立がん研究センター前理事長の堀田知光・国立病院機構名古屋医療センター名誉院長は、「高額薬は増えており、医師も患者も保険財政の負担を考える時期に入ったのではないか」と話しています。

 

 2017年7月1日(土)