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■血液脳関門通過技術を使ったハンター症候群の治験、3月末から開始へ JCRファーマ

 

 全身の細胞に不要になった物質がたまり、さまざまな症状が現れる難病「ハンター症候群」で、これまで治療法がなかった知的障害の改善を試みる薬の治験を、製薬会社JCRファーマ(兵庫県芦屋市)が3月末から始めます。

 薬を点滴で投与し、脳の血管の「血液脳関門」を通過させて神経細胞に届ける技術を開発した成果で、今後、アルツハイマー病など他の脳神経疾患の治療薬への応用が期待できます。

 ハンター症候群は、ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症という遺伝性難病の一つ。ムコ多糖は細胞同士の接着に使われ、常に合成と酵素による分解が繰り返されています。しかし、このイズロン酸2スルファターゼという酵素が生まれ付きできないか働きが弱いハンター症候群の患者は、不要物が全身の細胞内に蓄積する結果、気管支や心臓の病気、肝臓などの肥大、関節のこわばり、知的障害など全身に症状が出ます。

 多くの患者を診療する国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の奥山虎之・ライソゾーム病センター長によると、ハンター症候群は男児にのみ現れるのが特徴で、国内では年間5~10人が病気を持って生まれ、現在は200人弱の患者がいると推計されます。患者の7割ほどが重度の知的障害を伴っており、4~5歳ごろから障害が進行し、最終的には意思疎通ができなくなります。

 かつては未成年で死亡する患者が多かったものの、現在は必要な酵素を供給する点滴薬のお陰で、体の症状は改善できるようになりました。しかし、脳への有害物質の流入を防ぐため、決まった物質以外は血管の壁を通さない血液脳関門を通過できないため、脳内で薬効を発揮できず、中枢神経症状に効果が期待できないという課題がありました。

 JCRファーマは、決まった物質と一緒に必要な酵素を通過させる技術を適用した酵素製剤を開発。動物実験では効果が確かめられたといいます。

 マウスでは1カ所だけ足の着く場所があるプールに放って泳がせる実験をした結果、病気を発症させたマウスは足の着く場所を全く覚えられなかったものの、薬を投与すると正常なマウスと同等の記憶・学習能力が回復しました。サルの実験では、投与後に脳内に酵素が届いていることが画像検査で確認されました。

 奥山センター長は、「初期に投薬を始められれば、症状が改善する可能性がある」と話す。

 

 2017年3月20日(月)