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健康創造塾

各種の健康情報を発信

■ピロリ菌の自治体検診と除菌治療、中高生にも拡大 将来的な胃がんを予防

 

 将来の胃がん予防のため、中高生を対象にピロリ菌の検診、除菌治療に乗り出す自治体が出てきました。

 専門家は除菌治療が胃がん予防につながる意義を強調しつつ、除菌治療に伴う副作用への対処を始め、より安全な実施方法の検討などを進める必要があると指摘しています。

 佐賀県が2016年度から全国の都道府県で初めて中学生への検診事業を始め、鹿児島県も2017年度から高校生を対象に計画しているほか、大分県内や北海道内などの自治体でも実施中や計画中のところがあります。

 佐賀大学医学部附属病院(佐賀市)小児科で、ピロリ菌の検査と除菌治療に取り組む垣内俊彦医師は、「日本人の胃がんの多くはピロリ菌感染が原因とみられており、中高生への検診、除菌治療は将来的な胃がん予防の面から必要だと考えている」と説明しています。

 佐賀県胃がんによる死亡率が全国的にみても高く、今年度、県内の中学3年生を対象に、ピロリ菌の検診、除菌治療を始めました。昨年7月に早期胃がんの手術を受けた経験を持つ山口祥義知事の肝いりで、県では胃がん予防という「子供たちの将来への贈り物」としています。

 受診は任意で、保護者の了解が得られた生徒について学校健診で採取した尿を調べ、感染の疑いがある陽性であれば検便で確定検査を行います。感染がわかった生徒は、希望すれば無料で除菌治療を受けることができます。

 除菌まで行うと1人2万円ほどかかるという費用は、県が負担します。中学3年生は体格が大人に近付き、15歳以上で成人と同じ用量で除菌薬が服用できます。

 垣内医師によると、佐賀県内の中学3年生8912人のうち、2月3日現在で6994人(78・5%)から同意が得られ検査を行いました。確定検査で感染がわかったのは、243人だったといいます。

 感染が見付かった佐賀市内のある男子生徒(15歳)は、すでに除菌治療を終了。自身も数年前に会社の健康診断でピロリ菌の感染が見付かり、除菌を行った父親(41歳)は、「早い段階で感染の有無がわかり、親の責任として治療を受けさせることができるのでありがたい」と、県の取り組みを歓迎しています。

 ピロリ菌は人間の胃にすむ細菌で、1980年代にオーストラリア人医師によって発見されました。食物などを通じて口から感染し、胃炎や胃潰瘍胃がんを引き起こす原因となります。除菌には、抗生物質2種類と胃酸を抑える薬を約1週間服用します。

 中高生へのピロリ菌の検診は、北海道や秋田県山形県、長野県、大阪府兵庫県岡山県などの自治体で実施されるなど近年拡大しています。

 世界保健機関(WHO)が2014年の報告書で、胃がんの約8割はピロリ菌の感染が原因であると発表。ほとんどが5歳までに感染し、若いうちに除菌を行うことが効果的とされることや、感染者数の減少、がん教育につながる面などが背景にあるとみられます。

 中でも北海道は北海道大学によるピロリ菌研究が盛んなことを背景に、北海道庁の2016年末時点の調べでは37自治体が実施、8自治体が実施予定で、道内の約4分の1に拡大しています。

 九州では大分県別府市が2016年度から中学2年生を対象に検査、除菌の助成事業を始めました。同市が行っている任意の生活習慣病予防検診で、ピロリ菌検査も希望すれば受けられるようにしました。また、同県臼杵市も2017年度から中学2年生を対象に、導入を検討しています。

 鹿児島県も2017年度から、高校1年生約1万6000人を対象に計画。保護者の同意を得た生徒について調べます。予算案に約3900万円を盛り込みました。

 厚労省研究班で調査を行った兵庫医科大ささやま医療センター(兵庫県篠山市)の奥田真珠美教授は、「中学生の感染率は5%前後で、自治体の予算や医療機関の体制の面でも受け入れ可能だと思われる。除菌治療に伴う下痢などの副作用の対処を始め、より安全な実施方法の検討などを進める必要がある」としています。

 一方、ピロリ菌感染者が必ずしも将来、胃がんになるわけではなく、若い世代への除菌が胃がんを減らす効果はまだ実証されていません。また、除菌薬には下痢や味覚異常などの副作用が報告されており、胃炎などの症状が出ていない段階での除菌には慎重な見方もあります。

 国立がん研究センター斎藤博・検診研究部長は、「除菌する人が増えれば、確率的には重い副作用を発症する人も出てくる可能性が否定できない。感染しているが無症状の健康な人への積極的な除菌が、無用な害を与える恐れがある」と指摘しています。

 佐賀県では今のところ大きな副作用の報告はないといいますが、除菌する医療機関を24時間対応可能な県内23施設に絞り、異常があれば施設へ問い合わせするよう呼び掛けています。

 

 2017年3月6日(月)