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健康創造塾

各種の健康情報を発信

■増えない小児からの臓器提供、7年間で12例 目立つのは心臓移植のための海外渡航

 

 脳死段階の子供から臓器の提供を可能にする法律が施行されて今年で7年になりますが、臓器の提供は年間数例にとどまり、移植を待つ間に亡くなる子供も少なくないことから、厚生労働省は改善策を提言するための専門家会議を設けて、検討を始めました。

 この専門家会議は、子供からの臓器の提供がなかなか増えない原因を分析し、解決策を検討しようと厚労省が新たに設けたもので、24日の初会合には小児科や救急の医師、法律の専門家など13人が出席しました。

 15歳未満の子供からの臓器の提供は、7年前の2010年の改正臓器移植法の施行によって可能になりましたが、提供はこれまで合わせて12例と、各臓器の合計で常に100人ほどいるとされる移植を希望する子供の数を大幅に下回り、待機中に亡くなる子供は少なくありません。

 専門家会議では、こうした背景に、脳死段階の子供からの臓器提供を行う体制が整備された医療機関が限られることや、虐待を受けた疑いがないか医療機関が判断するための基準が明確でないことなど複数の課題があり、家族が希望しても提供に至らないケースがたびたびあるといった意見が出されました。

 専門家会議では今後、挙げられた課題を元に専門家にヒアリングを行うなどして、改善に向けた提言をまとめる方針です。

 子供からの臓器の提供件数がなかなか増えないため、今も心臓移植のため海外に渡航する子供は少なくありません。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)の福嶌教偉(ふくしまのりひで)移植医療部長の調査では、国内で小児への心臓移植は9例なのに対し、改正臓器移植法の施行後、海外で10歳未満の23人が移植を受けています。

 脳死段階の小児から提供された肺や心臓は、その大きさが合う小児に移植されるのが一般的です。腎臓は移植を長く待つ大人への提供が多かったものの、国は優先的に小児に移植するよう基準を設けます。特に重い心臓病の小児は、体に合う心臓が提供されるまで待つのは難しく、腎臓や肝臓と違って親などからの生体移植もできません。

 2008年、国際移植学会は、「移植が必要な患者の命は自国で救える努力をすること」とするイスタンブール宣言を出しました。アメリカなどを除き、外国人への臓器提供を認めない国は多く、そもそも海外での移植には億円単位の資金も必要。

 埼玉県立小児医療センター(さいたま市)の植田育也・集中治療科長がかつて在籍した静岡県立こども病院(静岡市)の小児集中治療室(PICU)には、静岡県全域から重症患者が運ばれ、脳死とされ得るケースは年2例ほどありました。植田科長は、「人口比で考えると、小児の脳死は全国で年70例ほどでは」と話しています。

 それでも小児からの臓器提供は、年1~4例。植田科長が静岡県立こども病院で意思を確認した9家族は、いずれも臓器提供を希望しなかったといいます。日本は臓器提供する場合に限って脳死を人の死と認めており、承諾する家族は結果として子の死を選ぶことになり、つらい決断を迫られます。

 救急現場などでは悲嘆に暮れる家族に配慮し、臓器提供を切り出さないことも多いといいます。国立循環器病研究センターの福嶌部長は、「家族が提供できることを知らず、後で『移植できたのでは?』と聞かれる例もある」と指摘しています。

 国民の理解を深めるとともに、移植を巡る体制整備も課題です。日本臓器移植ネットワークの調査では、2010年7月~2015年3月に18歳未満で「提供の可能性がある」と連絡を受けた中で、83例が提供に至りませんでした。その理由は「施設の体制未整備」が最多で、17・5%でした。

 臓器移植では、まず脳死とされ得る状態かを判断し、虐待による死でないことも確認しなければなりません。家族の意向を確認し、実際の脳死判定は2度行う必要があります。ハードルは高く、病院は重い責任を負います。

 日本臓器移植ネットワークは病院に担当者を派遣し、移植に必要な手術室や機材確保などを担う院内担当者の配置やマニュアル整備などを支援しています。2011年度から本格化させており、2016年度は対象を全国66病院に広げました。

 

 2017年2月25日(土)