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■他人のiPS細胞を使い網膜細胞移植、今年前半にも実施 厚労省部会が世界初の臨床研究を了承

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 目の難病の患者に他人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した目の網膜細胞を移植する、理化学研究所などによる世界初の臨床研究計画を1日、厚生労働省厚生科学審議会の再生医療等評価部会が了承しました。

 本人のiPS細胞を使う場合に比べ、コストと時間を大幅に削減でき、iPS細胞の本格的な医療応用への一歩となります。今月中に厚労相が正式に承認し、今年前半にも実施されます。

 iPS細胞は、がん化のリスクの低減が大きな課題となっています。厚労省によると、同部会は臨床研究に使う細胞の615種類のがん関連遺伝子に異常がないとする理研などのデータを確認し、計画を了承しました。

 臨床研究は、理研のほか、京都大学iPS細胞研究所、神戸市立医療センター中央市民病院、大阪大学医学部付属病院の計4機関が、進行すると失明の恐れもある目の難病「加齢黄斑変性」の患者5人を対象に計画しています。

 京都大学iPS細胞研究所があらかじめ健康な人から作製して備蓄したiPS細胞を、理研が目の網膜細胞に変え、両病院で患者の目に注射して移植します。

 理研などは2014年9月、女性患者本人のiPS細胞で作った網膜細胞のシートを移植する臨床研究1例を実施。経過は良好ですが、手術の同意から移植までに約1年かかり、コストも約1億円に上りました。他人のiPS細胞を使えば移植までの時間は1カ月程度、費用は1人当たり2000万~数百万円にできるといいます。

 他人の細胞を移植に使うため、京都大学では拒絶反応が起きにくい特殊な免疫の型を持つ人の血液からiPS細胞を作製しています。

 理研などは昨年10月、今回の計画を厚労省に提出していました。

 審査終了後、部会長の福井次矢・聖路加国際大学長は、「動物実験などのデータから、移植による利益を上回るリスクはないだろうと判断した」と説明しました。

 日本再生医療学会の理事長で、自身も他人のiPS細胞から作った心臓の筋肉の細胞を患者に移植する研究を進めている大阪大学の澤芳樹教授は、「他人のiPS細胞を使った臨床研究のスタートは今後、再生医療が発展していくための大きな一歩だ」とした上で、「今後、研究者らが議論を続け、安全性についての情報を共有し、患者にとって最もよい有効性と安全性のバランスを考えていく必要がある。より迅速に患者の元に新しい再生医療を届けられるよう、我々も続いていきたい」と話しています。

 加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑という部分が傷付いて、働きが低下し、視野がゆがみ、視力が低下する目の病気で、症状が進行すると視力が失われます。日本では失明原因の第4位で、50歳以上の人の約1%にみられて、国内の患者はおよそ70万人と推計され、多くが進行の早いタイプだとされています。

 患者に対しては従来、薬剤を注射するなどの治療が行われてきました。しかし、症状が進むのを抑えることはできても、傷付いた黄斑を修復する効果はあまり期待できず、根本的な治療法にはなっていません。

 

 2017年2月3日(金)