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■がん患者の病院内オフィス、厚労省が整備へ 仕事の継続を後押し

 

 がんと診断されると、治療などで長期間職場を離れ、依願退職や解雇を余儀なくされるケースが依然多いことから、 厚生労働省は、病院内に共用オフィスを整備し、仕事が継続できるよう後押しすることを決めました。

 政府が掲げる「働き方改革」の一環で、治療と仕事を両立させて離職を防ぐのが狙い。来年度、希望する全国5カ所程度の病院に設置し、効果を検証します。

 がんなどで治療が長期にわたる場合、3割以上の人が離職しているといい、その理由としては「休みを取るのが難しい」「会社や同僚に迷惑がかかる」などが挙げられています。

 そのため、厚労省では来年度、病院に委託して会議室や空き部屋に無線LANのほか、パソコンやファックス、プリンターなどを設置し、無料で利用できる病院内オフィスを整備します。所属する事業所以外で働けるほか、取引先や自宅に近い病院内オフィスを使うことで通勤時間の短縮にもつながり、在宅勤務よりも労働環境が整うメリットがあります。

 がん患者の就労を支援する一般社団法人CSRプロジェクト」代表理事の桜井なおみさん(49歳)は、「がん患者は安定期に入って体調がよくなると、仕事への焦りや疎外感が、病気の不安と重なって押し寄せる。働く環境があれば、社会復帰への自信につながるはず」と話し、病院内オフィスを設置する取り組みを評価しています。

 桜井さんは設計事務所で働いていた13年前、乳がんの手術で約3週間入院。手術の痛みが治まると、職場とのメールのやり取りや、簡単な書類を作成する必要が生じましたが、同室の入院患者への気兼ねから断念した経験があるといいます。「退院後、スムーズに職場復帰する段取りができなかった。病院内にオフィスがあれば利用したと思う」と振り返っています。

 厚労省によると、働きながら通院するがん患者は約32万5000人と推計されますが、就労の継続は容易ではありません。

 静岡がんセンター(静岡県長泉町)が2013年に行ったがん体験者に対する実態調査では、会社などで働いていた人のうち、「依願退職した」「解雇された」のは計34・6%。2003年に同センターと厚労省が合同で調査した際の34・7%とほぼ同じで、状況は改善されていませんでした。

 このほか、辞めるように促されたり、辞めざるを得ないような配置転換をさせられたという意見もあり、がんになると仕事を続けられない背景としては、治療に対する周囲の理解不足が指摘されます。

 一方、がんや難病患者の社会復帰に取り組むNPO法人「みんなでサポートちば」の理事長で、社会保険労務士の岩崎真弓さん(66歳)は、今回の取り組みに一定の評価はするものの、「労働時間の管理など、留意すべき点も多い」と訴えています。

 がんなどの治療で職場を離脱している人は、会社との接点が減ることで、労務管理の目が行き届かない恐れがあると指摘。パソコンの使用履歴や病院内オフィスへの入退室時間を把握し、長時間労働にならない仕組み作りなどが必要だといいます。

 岩崎さんは、「患者は遅れを取り戻そうと、無理して働きすぎてしまうことがある。利用の際には、健康回復が最優先であると会社側が患者に意識付けることが大切」と話しています。

 厚労省も、会社以外で働く「テレワーク」を行う際の注意点などが記載された資料を、委託先の病院に提供して、運営者としての注意点などについて周知し、働きすぎ対策を行う方針です。

 

 2017年1月31日(火)