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健康創造塾

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■世界初、生体と同様の働きをするミニ腸 万能細胞から作製に成功

 

 国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)や東北大などの研究チームが、体のさまざまな組織になる万能細胞である人のES細胞(胚性幹細胞)やiPS細胞(人工多能性幹細胞)を使って、生体とほぼ同様の働きをする1~2センチメートルの立体的な腸(ミニ腸)を作製することに世界で初めて成功したと、12日付のアメリカの科学誌「JCIインサイト」で発表しました。

 潰瘍(かいよう)性大腸炎クローン病などの難病の治療や、創薬の開発につながり、将来的には移植治療への応用も目指しているといいます。

 成育医療研究センターの阿久津英憲・生殖医療研究部長によると、研究は約10年前から着手しました。腸は消化、吸収、蠕動(ぜんどう)運動など複雑な構造や機能を有し、その再現は極めて困難だとされていました。

 研究チームは、細胞を培養する容器の形状に着目。微細加工技術を容器の底に施し、細胞が自己組織化する能力を引き出す空間作りに成功しました。その中に人のES細胞を入れ、3種類の特殊なタンパク質を加えて培養すると、細胞が集まって風船状の複雑な立体構造をしたミニ腸ができました。

 作製期間は平均2カ月ほどで、早ければ1カ月でできるといいます。ミニ腸はiPS細胞からも作製できますが、作製効率や組織の成熟度はES細胞のほうが優れているといいます。

 ミニ腸の内部には、生体の小腸と同じように栄養を吸収する「柔毛」と呼ばれる突起があり、収縮運動をしてタンパク質や水分を取り込む様子が確認できました。また、医療現場で使われている液体の便秘薬をかけると、生体の腸が便を排出する際に行うのと同じ収縮運動を始め、反対に下痢止めをかけると、収縮運動をしなくなるなどの反応も確認できたということです。

 ミニ腸は培養容器の中で1年以上生存するため、創薬にも応用しやすく、開発中の薬剤の吸収能力や下痢などの副作用を評価する用途などを見込んでいます。病気の発症の仕組みを解明する研究も期待できます。

 培養液は動物の成分を含んでおらず、細菌感染などの恐れも少ないため、将来、ミニ腸で作った細胞を移植したり、通常の小腸の大きさにして移植したりする治療法が実現する可能性もあります。アメリカなどではすでに、人のES細胞から作った目や神経などの細胞を移植する臨床試験が実施されています。

 阿久津部長は、「腸の病気は治療に難渋する患者が多い。ミニ腸を使って病気の症状を再現できれば、腸の難病の発症のメカニズムの解明や薬の開発につながる成果で、今後も研究を続けていきたい。将来的にはミニ腸を人に移植する再生医療にもつなげたい」と話しています。

 

 2017年1月13日(金)