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■ブタ細胞、人への異種移植を容認へ 1型糖尿病の患者が対象

 

 動物の臓器や細胞を人に移植する「異種移植」について、厚生労働省の研究班は、これまで事実上、移植を禁じていた指針を見直します。

 国内の研究グループは数年後にも、1型糖尿病の患者にブタ細胞の移植を計画。患者にとっては、インスリン注射の重い負担を減らせる可能性があります。

 異種移植は、人からの提供不足を解決する手段として世界で研究されています。臓器の大きさや管理のしやすさから、ブタが主な対象で、近年は細胞を使って強い拒絶反応を避ける技術が一部で実用化し、海外では人の治療に応用され始めています。

 国内では、厚労省の「異種移植の臨床研究の実施に関する安全性確保についての研究班」が2001年度に作った指針で、ブタが進化する過程で遺伝子に組み込まれたウイルスを「人への感染の危険性が排除されるべき病原体」としています。取り除くことが難しいため、これまで移植が実施されたことはありませんでした。

 しかし、海外ではこのウイルスが人やサルに感染した報告がないことなどから、危険性の評価を見直し、新しい指針では移植後30年間経過を観察することを条件に、認めることにしました。5月にも厚労省の部会に報告され、事実上の解禁となります。

 国内初の臨床研究として、国立国際医療研究センター研究所(東京都新宿区)などは、1型糖尿病の患者に、インスリンを分泌するブタの膵島(すいとう)細胞を移植する計画を進めています。

 拒絶反応を避けるため、人の免疫細胞や抗体を通さない特殊な膜でブタの細胞を包み、患者の皮下に移植。実験用のブタを生産している企業と協力して、ほぼ無菌のブタを供給する仕組み作りも進めます。研究チームは2~3年後にも、安全性や動物の細胞を人に使う倫理面について第三者委員会に諮った上で、患者に移植する方針です。

 国際医療研究センター研究所の霜田雅之・膵島移植プロジェクト研究長は、「異種移植の実現で、膵島の不足を解消したい」と話しています。

 異種移植を巡っては、ニュージーランドベンチャー企業が、ブタの膵島細胞をカプセルに包んだ薬を開発。同国やアルゼンチンなどの1型糖尿病の患者計24人に移植され、効果を確認。脳細胞を使ったパーキンソン病治療の研究も進めています。

 異種移植を長年研究している大塚製薬工場の松本慎一特別顧問は、「国際学会でもここ数年でルール作りの議論が活発になり、環境が整ってきた」と話しています。

 1型糖尿病は、膵臓にある膵島(ランゲルハンス島)細胞が壊れて血糖を安定させるインスリンを分泌できなくなる病気。国内の年間発症率は、10万人当たり1~2人と推計されています。生涯にわたってインスリンを注射する必要があり、膵島を移植する方法もあるものの、人からの提供は極度に不足しています。

 

 2016年4月10日(日)