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ジカ熱

 

蚊が媒介するジカウイルスによる感染症で、中南米を中心に流行

 ジカ熱とは、ジカウイルスというウイルスに感染して、引き起こされる感染症。ジカウイルス感染症とも呼ばれます。

 ジカウイルスは、デングウイルス、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属します。1947年に、アフリカのウガンダの「ジカの森」にいたアカゲザルから初めて見付かり、1952年に、ウガンダタンザニアで初めて人の感染が確認されました。

 世界保健機関(WHO)によると、ジカウイルスはアフリカから、東南アジア、太平洋諸国、南米のブラジルへと広がっていったとみられます。2007年には、ミクロネシア連邦ヤップ島で流行、2013年から2014年に、フランス領ポリネシアで流行し約1万人の感染者を出したほか、2014年には、チリのイースター島でも感染者が確認されました。

 そして、2015年5月に、ブラジル北東部の州で地域的な流行が確認されて以降、中南米を中心に流行が急拡大し、2016年3月9日現在、50を超す国・地域から感染が報告されています。

 アメリカやヨーロッパ、そして日本でも、流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症するケースが、報告されています。感染者は今後、400万人に上ると予測されています。

 また、8月にリオデジャネイロオリンピック、9月にパラリンピックが開催されるブラジルでは、頭が小さくなり知的障害を伴うこともある小頭症を伴って生まれた新生児が、疑い例も含めて4000人以上に急増しており、妊娠中の女性のジカ熱感染との関連が強く疑われています。

 同時に、ジカウイルスに感染すると、体の中の免疫システムが自分の神経を攻撃してしまうことで、手足に力が入らなくなる難病、ギラン・バレー症候群になる可能性があるとされています。発症の確率はジカ熱の感染者10万人当たり24人程度とまれながら、患者の20パーセントほどで胸の筋肉がまひして呼吸が困難になるほか、合併症を伴って5パーセントほどの人が亡くなるという報告もあります。

 こうした状況を受けて、世界各国の保健当局は、妊娠中の女性がブラジルなどの流行地に旅行するのを控えるよう呼び掛けています。性交渉を通じた感染報告も増えており、妊娠中は流行地域に旅行した男性パートナーとの性交渉を控えるか、コンドームを使うよう求めてもいます。

 日本では3月中旬、ブラジルに滞在歴があり、発熱や発疹の症状を訴えていた愛知県に在住する外国籍の30歳代女性が、ジカ熱に感染していると確認されました。

 中南米を中心に流行が広がった2005年以降、日本国内で患者が確認されたのは2例目で、厚生労働省は感染経路の特定を進めるとともに、現段階では国内で感染が拡大するリスクは極めて低いとして冷静に対応するよう呼び掛けました。

 ジカ熱への感染が確認された女性は、全身の発疹(はっしん)、38・2度の発熱、関節痛などの症状を訴えて愛知県内の医療機関を受診。女性は2月に2週間程度ブラジルに滞在した後、帰国していたということで、3月中旬になって国立感染症研究所で女性の血液などを調べたところ、感染が確認されたということです。

 日本国内で患者が確認された1例目は、家族と一緒にブラジルに旅行した後、帰国した川崎市に住む10歳代の男性で、2月下旬に感染が確認されました。

 日本国内では2013年から2014年に、当時ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、これまでフランス領ポリネシアやタイに渡航歴のある3人の男女の感染が確認されていますが、ブラジルなどの中南米で流行が始まった2015年以降、確認されたのは、これが初めてでした。

 厚労省は、感染経路について調べるとともに、帰国後にどこに滞在したかについても聞き取りを行って、蚊が発生する可能性がある場所の調査や駆除を行いました。国内で2人の患者が見付かったものの、2月、3月の時点ではウイルスを媒介する蚊が活動していないため、感染が広がるリスクは非常に低いと見なされました。

 ジカウイルスを媒介するのは、主に熱帯や亜熱帯に生息するネッタイシマカや、日本にも生息するヒトスジシマカ。感染者の血液を吸ったネッタイシマカやヒトスジシマカが別の人を刺すことで主に広がるとされ、感染すると3日から12日間ほどの潜伏期間の後、38度5分以下の発熱や発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠(けんたい)感、頭痛などの症状を引き起こします。

ジカ熱の治療と対策と予防

 医療機関を受診した際は、ワクチンや特効薬はないため、飲水の励行や、輸液による水分補給、鎮痛解熱剤の投与といった対症療法を中心に施すことになります。

 同じように蚊がウイルスを媒介するデング熱と比べると、比較的症状は軽く、多くの場合、2日から1週間程度で症状は治まります。また、感染しても、実際に症状が出る人は4、5人に1人程度と見なされます。

 ジカ熱の感染が世界的に広がっていることを受けて、厚生労働省は2月下旬、ジカ熱をデング熱日本脳炎と同様に4類感染症に位置付け、全国の医療機関に対して、患者を診察した場合、保健所を通じて国に届け出るよう義務付けました。

 同時に、空港の検疫所で中南米から帰国した人などを対象に、サーモグラフィと呼ばれる特殊な機器を使って体温を調べ、水際での対策を強化したほか、検査キットを全国の都道府県の衛生研究所に配布しました。

 今後も日本国内でジカ熱の患者が出る可能性はあり、5月になると本州でも蚊の活動が活発になります。ジカウイルスは感染しても4、5人に1人しか症状が出ないので、知らないうちにウイルスが広がっている可能性もゼロではありません。

 また、ブラジルやコロンビア、メキシコなど、感染が確認されている国や地域へ渡航したり滞在したりする人は、十分注意する必要があります。特に、妊娠中の女性は、渡航や滞在を可能な限り控えることが求められます。

 やむを得ず渡航する場合は、防虫スプレーを使用したり、皮膚を露出しないように長袖(ながそで)や長ズボンを着用したりし、外出を控えるなど、蚊に刺されないための対策を講じる必要があります。