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薬剤性難聴

 

病気の治療に使用している薬剤の副作用により、内耳が障害を受けて発症する難聴

 薬剤性難聴とは、病気の治療のために使用している薬剤の副作用によって、耳の奥にある内耳が障害を受けたことで発症する難聴。

 正常な場合よりも聴力が低下した状態である難聴は、伝音(でんおん)難聴(伝音性難聴)、感音(かんおん)難聴(感音性難聴)、混合難聴(混合性難聴)の3つに大きく分けられます。

 伝音性難聴は、空気の振動として耳に入ってくる音が外耳の一部である外耳道や、外耳と中耳の境目にある鼓膜、中耳内にある耳小骨を震わせて振動を伝えていく部分に、障害が生じたために起こります。音が十分に伝わっていかないため、音が鳴っていること自体を把握することが難しい性質を持っています。

 感音難聴は、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる難聴。突発性難聴や騒音性難聴の場合も、感音難聴に含まれます。

 混合難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方の特徴を併せ持った難聴。多くの老人性難聴は混合難聴ですが、どちらの度合が強いかは個人差が大きいといえます。

 また、難聴の度合は一般的に、平均聴力レベルが20デシベルまでを、ささやき声もよく聞こえる正常聴力として、40デシベルまでを、小声が聞きにくい軽度難聴、70デシベルまでを、普通の声が聞きにくい中度難聴、70デシベル以上を、大きな声でも聞きにくい高度難聴、90デシベル以上を、耳元での大きな声でも聞こえない重度難聴、100デシベル以上を、通常の音は聞こえない聾(ろう)に分けます。

 こうした難聴を引き起こす薬剤は耳毒性薬剤とも呼ばれ、結核の治療に用いられる抗生剤(抗生物質)のストレプトマイシンやカナマイシン、ゲンタマイシンなどが代表として挙げられます。

 ストレプトマイシンなどは、アミノ配糖体系というグループに属する薬剤で、普通の炎症に用いる薬剤にもこのグループに属している薬が多く、アミノ配糖体系の薬剤は程度の差はあれ、すべて耳毒性(聴器毒性)を持っています。しかも、注射で全身的に使用した場合だけではなく、点耳薬のように局所的に使用した時にも難聴が起こることがあります。

 抗生剤のほかにも、利尿剤のフロセミド、抗がん剤のシスプラチンやアルキル化薬、リウマチ治療剤のサリチル酸などが、難聴を引き起こす薬剤として挙げられます。その耳毒性は、アミノ配糖体系薬剤よりは軽度です。

 いずれの薬剤でも、内耳の感覚細胞の障害が発生します。また、薬剤の種類により、音を感じる蝸牛(かぎゅう)に主に障害が起こる難聴と、体の平衡感覚に関係する前庭・三半規管に主に障害が起こる難聴とに分けられます。

 薬剤性難聴の症状としては、蝸牛に主に障害が起これば、耳鳴りから始まり、続いて難聴に気付くパターンが多いのですが、耳鳴りはない場合もあります。

 初期段階では高い周波数の難聴から始まり、次第に会話で使うような低い周波数の難聴へと進行してゆきます。難聴は両方の耳に同時に起こることが多く、症状が進むと、両耳とも全く聞こえなくなることもあります。

 また、薬剤によって前庭・三半規管に主に障害が起これば、めまい感やふらつきが生じ、時には吐き気、頭痛が現れるケースもあります。特に、両側の前庭・三半規管が高度に損なわれた場合には、歩行時に景色がぶれるようになり、歩行障害や転倒の原因になります。

 難聴を引き起こす薬剤には耳毒性があるため、難聴以外の症状が出ることがあり、注意が必要です。薬剤の使用開始後に耳鳴り、難聴、めまい感、ふらつきが現れたら、すぐに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し早期発見することが必要です。

薬剤性難聴の検査と診断と治療

 耳鼻咽喉科の医師による診断では、純音聴力検査により難聴の程度、平衡機能検査により平衡障害の程度を評価します。

 耳鼻咽喉科の医師による治療では、副作用の症状を認めた場合、原因となる薬剤の特定を行い、中止してもよい薬剤であれば、直ちに使用を中止します。ほかの薬に切り替える場合もあります。

 薬剤の使用を中止しても難聴が治らないばかりか、さらに悪化する場合があります。ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)、ビタミン剤などによる治療を行っても、治療効果が期待できない場合がほとんどです。

 従って、アミノ配糖体系の薬剤など耳毒性のある薬剤を病気の治療に使う前には検査を行い、使用中も定期的に聴力検査を繰り返し、日常生活に支障を来すほどの難聴が起こらないように予防することが大切になります。

 アミノ配糖体系の薬剤で難聴が起こるかどうかは個人差が大きく、長期間使用しても難聴にならない人もいますし、短期間の使用で難聴になる人もいます。このため、薬の使用量から難聴の起こる時期を予測することはできません。

 日常会話で難聴を自覚していなくても、耳鳴りが起こったら、高い音から聞き取れなくなる内耳障害が起こっていないか、聴力検査を受ける必要があります。

 なお、アミノ配糖体系の薬剤には、耳毒性だけではなく、腎(じん)毒性もあり、利尿剤のフロセミドを併用すると内耳と腎臓に対する毒性が増強します。また、腎機能が低下している人や高齢者は薬が体内に蓄積しやすく、難聴が起こりやすくなることを念頭においておく必要があります。