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パニック障害

 

強い不安感を主症状とする精神疾患

 パニック障害(PD=PanicDisorder)とは、状況に関係なく突然、発作が起こる精神疾患の一つ。

 かつては、全般性不安障害とともに不安神経症といわれていました。現在では、世界保健機関(WHO))の国際疾病分類(ICDー10)によって、独立した病名として登録されています。

 日本人の生涯有病率は、2~3パーセントと見なされています。女性の罹患(りかん)率は、男性に比べて2倍程度に上るとも見なされています。

 発症の原因は、はっきりと解明されているわけではありません。ストレスや脳内の伝達物質の動きに関連があるといわれ、過労や睡眠不足、風邪などの身体的な悪条件が誘因になるともいわれています。

 定型的なパニック障害は、突然に起こるパニック発作によって始まります。続いて、その発作が再発するのではないかと恐れる予期不安と、それに伴う発作の慢性化が生じます。さらに長期化するにつれて、発作が生じた時に逃れられないような、あるいは助けを呼べないような特定の場所や状況を回避して、生活範囲を限定する広場恐怖が生じてきます。

 パニック発作の症状は、さまざまです。動悸(どうき)、発汗、身震い、窒息感、胸痛、吐き気、めまい、手足のしびれ、強い不安感、非現実感、発狂への恐怖感、死への恐れなどが、代表的です。多くの場合は、10分以内でピークに達し、通常20~30分ほど、長い人でも1時間以内には収まります。

 このパニック発作に、発症者は非常に強烈な恐怖を感じるため、再び発作が起きるのではないかと、不安を募らせていく予期不安を生じます。生活様式が変化して、神経質になり、いつも心身の状態を観察するようになります。そして、持続的に自律神経症状が起こることとなり、パニック発作が繰り返し生じるようになっていきます。

 パニック発作の反復とともに、広場恐怖の症状、すなわち発作が起きた場合に、その場から逃れられないと思われる状況を回避する症状を生じるようになります。パニック障害を発症した人のうち4人に3人は、多かれ少なかれ広場恐怖が出ると見なされます。

 回避される状況は人によってそれぞれ異なりますが、一般的には、電車、バス、飛行機、車、エレベーター、歯科、理容室、美容室、映画館、会議室、商店でのレジ待ち、道路の渋滞といった一定時間、特定の場所に拘束されてしまう環境や、繁華街、ショッピングモールといった人込みの中などが多いようです。

 ちなみに、広場恐怖の「広場」はギリシャ語で「市場」、「集会」などの意味を持つ「アゴラ(agora)」が語源であり、「広い場所」という意味ではありません。

 より不安が強まると、家にこもりがちになったり、一人で外出できなくなることもあります。生活上の障害が強まり、社会的役割を果たせなくなっていき、それに伴う周囲との葛藤(かっとう)もストレスとなり、症状の慢性化をさらに推進していくこととなります。

 予期不安や広場恐怖により社会的に隔絶された状態が続くと、ストレスや自信喪失などによって、うつ状態となることも少なくありません。気分の浮き沈みが激しい、夕方近くや夜になると理由なく泣く、いくら寝ても眠い、体が重りをつけたようにだるい、言葉に敏感に反応して切れたり強く落ち込む、時に自傷行為を図るといった、いろいろな逸脱行動が出ます。

 元来うつの症状が見られなかった人でも、繰り返し起こるパニック発作によって不安が慢性化していくことでうつ状態を併発し、実際にうつ病と診断されるケースも多く報告されています。パニック障害うつ病が併発する割合について、日本では約3割、欧米では約5~6割といった統計も出されています。

 ただし、うつ状態パニック発作に起因して二次的に発症した別個の疾病であり、パニック障害そのものの症状とは分けて考える必要がある、という見方もあります。

診断と一般的な治療法

 パニック障害の疑いがあると思う時には、精神科、心療内科を受診する必要があります。

 医師による診断では、予期しないパニック発作が繰り返し起こり、それらに対する予期不安が1カ月以上続く場合、パニック障害の可能性を疑います。診断基準としては、アメリカ精神医学会「DSM-IV精神障害の診断と統計の手引き」が多く用いられています。

 実際のパニック障害の診断では、広場恐怖を伴わない軽症例と、広場恐怖を伴う慢性化した症例との2つに区分されます。なお、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、うつ病強迫性障害などの精神疾患の症状の一つとしてパニック発作を併発する場合は、これらの病気の症状の一つとして扱われます。

 身体疾患が原因になっている場合も、パニック障害とは診断しません。心血管系の病気、呼吸器の病気、低血糖、薬物中毒、てんかんなど、パニック障害と同じような症状を引き起こす他の疾患がないことを確認するため、尿検査、血液検査、心電図検査、脳波検査なども行われます。

 パニック障害の治療法には、薬物療法、精神療法、生活習慣の改善などがあります。

  薬物療法では、発作の抑制を目的にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や三環系の抗うつ薬が用いられ、不安感の軽減を目的にベンゾジアゼピン系の抗不安薬が用いられます。

 最近では、新型抗うつ薬であるSSRIの有効性が語られることが多いのですが、SSRIの代表とされるパロキセチン(商品名:パキシル)では、飲み忘れなどで服用を中止した数日後に起きる激しいめまい、頭痛などの離脱(禁断)症状が問題となり、パニック障害に対する安全性、有用性に疑問も呈されています。

 一方、米国ではベンゾジアゼピン系の抗不安薬の依存性が問題とされることが多いのですが、日本では、成人の定型的パニック障害ではあまり問題とならないとする意見も多くみられます。

 精神療法では、最も基礎的で、重要なものが、疾患に対する医師の説明。パニック障害は発作の不可解さと、発作に対する不安感によって悪化していく疾患ですので、医師が明確に症状について説明することが、すべての治療の基礎となります。

 同時に、認知行動療法も行われます。精神療法の中で、有効性について最もよく研究されているのが、この認知行動療法です。不安が誘発される状況に想像的または体験的に身を置き、回避しないことで徐々に慣れる暴露療法、過呼吸にならないようなリラクゼーショントレーニングである呼吸法、筋肉を緩めるリラクゼーショントレーニングである筋弛緩法などが行われ、基本的には不安に振り回されず、不安から逃れず、不安に立ち向かう訓練、練習を行います。

 認知行動療法は一歩間違えると、症状の悪化につながりかねないので、専門医の指導の元で無理をせず慎重に行う必要があります。日本では、系統的な認知行動療法を行う施設は多くありませんが、精神科、心療内科の医師が認知行動療法的な指導を行っているケースは多くみられます。

 そのほか、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理)、森田療法内観療法も有効とされています。

 パニック障害の発症者にとっては、睡眠不足などの乱れた生活習慣や、精神的なストレスが治療の大敵。生活習慣を改善し、ストレスをためないようにしましょう。そのためにも規則正しい生活を送り、それぞれに合った気分転換の方法を見付けるとよいでしょう。