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バッド・キアリ症候群

 

肝臓から出る血液の流れが悪くなり、門脈圧高進症などの症状を示す疾患

 バッド・キアリ症候群とは、肝臓から出る血液の流れが悪くなるために、腸から肝臓につながる血管である門脈の血圧が上昇し、門脈圧高進症などの症状を示す疾患。肝後性の門脈圧高進症とも呼ばれます。

 血液は心臓を中心に循環していますが、肝臓に入った血液は大きな3本の肝静脈から肝臓の外に出て、肝部下大静脈に集められ、心臓に戻ります。従って、肝静脈や下大静脈が何らかの原因で閉塞(へいそく)ないし狭窄(きょうさく)すると、肝臓を巡る血流全体が障害され、門脈圧の上昇から二次的な病態である静脈瘤(りゅう)、脾腫(ひしゅ)、腹水を生じる門脈圧高進症や、肝臓のうっ血を起こします。

 原因がはっきりしない場合を原発性バッド・キアリ症候群といい、肝腫瘍(しゅよう)、炎症、腹部外傷、血液疾患、血管炎、血液凝固異常、経口避妊薬の使用など、原因が明らかな場合を続発性バッド・キアリ症候群といいます。原発性バッド・キアリ症候群が約70パーセントを占めており、なぜ肝静脈や下大静脈の血管が詰まりやすいのか、はっきりしたことはわかっていません。

 また、バッド・キアリ症候群は比較的まれなものと考えられてきましたが、超音波検査の普及に伴い、発生例が増えています。経過からみると急性型と慢性型とに分けられ、日本ではほとんどが慢性型で、下大静脈の閉塞か狭窄によるものです。

 急性型では腹痛、吐血、肝腫大、腹水がみられ、時に重篤な経過をたどり急性肝不全で死亡することもあります。これに対し、慢性型は数週から数カ月という経過の中で軽度の腹痛や肝臓の腫大が生じるようになりますが、腹痛は現れないこともあります。

 下大静脈の閉塞の症状として、腹部や胸部の静脈が怒張して皮膚に血管が盛り上がって見えたり、下肢の浮腫が生じます。門脈圧高進症の症状は必発で、食道静脈瘤、胃静脈瘤、腹水がみられるようになります。脾臓が大きくなると脾機能高進症という状態になり、貧血を来すようになります。また、静脈瘤の血圧が上昇すると、静脈の血管が耐えきれな くなって破裂、出血し、吐血、下血などの症状が出ます。

バッド・キアリ症候群の検査と診断と治療

 内科、消化器科の医師による診断では、静脈からカテーテルを入れて、下大静脈や肝静脈造影を行い、これらの血管系の閉塞、狭窄が証明されればバッド・キアリ症候群と確定します。

 最近では、腹部超音波検査、CT、MRIなどの検査も有用です。超音波検査を行うと、下大静脈の閉塞や血栓が見られます。また、超音波ドップラー法という検査を行うと、下大静脈や肝静脈に通常とは逆方向の血流がみられます。

 内科、消化器科の医師による治療は、血管の閉塞、狭窄と門脈圧高進症に対して行います。続発性バッド・キアリ症候群の場合は、原因疾患の治療も必要です。

 諸検査で血栓が確認されれば、血栓を予防したり、溶解させるために抗凝固療法を行います。また、その病態に応じて、狭窄部のバルーンカテーテルによる狭窄部拡張術や、閉塞、狭窄を直接排除するような手術を選択して行います。

 門脈圧高進症の治療は、門脈圧の上昇から生じる二次的な病態である静脈瘤、脾腫、腹水などに対する対症療法が主体となります。中心になるのは食道静脈瘤、胃静脈瘤に対する治療で、予防的治療、待機的治療、緊急的治療があります。

 予防的治療は、内視鏡検査により、出血しそうと判断した静脈瘤に対して行います。待機的治療は、静脈瘤の出血後、時期をおいて行うものです。緊急的治療は、出血している症例に止血を目的に行う治療です。緊急的治療では、出血している静脈を収縮させる薬を静脈注射で投与し、失われた血液を補うために輸血をします。大出血に際しては、内視鏡的に静脈瘤を治療します。

 静脈瘤の治療は、1980年ころまでは外科医による手術治療が中心でしたが、最近では内視鏡を用いた内視鏡的硬化療法、静脈瘤結紮(けっさつ)療法が第一選択として行われています。

 内視鏡的硬化療法には、直接、静脈瘤内に硬化剤を注入する方法と、静脈瘤の周囲に硬化剤を注入し、周囲から静脈瘤を固める方法があります。どちらも静脈瘤に血栓形成を十分に起こさせることにより、食道への側副血行路と呼ばれるバイパスを遮断するのが目的です。静脈瘤結紮療法は、特殊なゴムバンドで縛って静脈瘤を壊死(えし)に陥らせ、組織を荒廃させ、結果的に静脈瘤に血栓ができることが目的となります。

 胃静脈瘤に対しては、血管造影を用いた塞栓(そくせん)療法も用いられます。また、門脈圧を下げるような薬剤を用いた治療、手術が必要な症例もあり、手術では側副血行路の遮断や血管の吻合(ふんごう)術が行われます。

 出血が続いたり再発を繰り返す場合は、外科処置を行って、門脈系と体循環の静脈系の間にシャントと呼ばれるバイパスを形成し、肝臓を迂回(うかい)する血液ルートを作ることがあります。静脈系の血圧のほうがはるかに低いため、門脈の血圧は下がります。

 脾腫を伴う場合は脾臓摘出術あるいは脾動脈塞栓術、腹水を伴う場合には利尿剤の投与などが行われます。