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破傷風

 

破傷風菌が傷口などから入って感染し、筋肉のけいれんを起こす疾患

 破傷風とは、破傷風菌が傷口などから入って感染し、菌が作り出す毒素が神経を侵し、強い筋肉のけいれんを起こす疾患。

 この破傷風菌は芽胞という硬い膜を有する細菌で、芽胞は乾燥状態では十数年生存可能で、抵抗力の強い性質を有します。酸素のない状態を好む嫌気性菌であり、地表から数センチ付近の世界中の土壌に広く分布しているので、砂粒や泥のついた古くぎ、木片などによる傷から侵入してきます。

 皮下などの組織で増殖して、放出する毒素は、人の神経の一部に接合して神経の興奮を持続的に引き起こすため、全身や顔面の筋肉のけいれんを引き起こします。

 一般的には傷口から感染しますが、まれに出産時の不適切な臍帯(さいたい)処理により感染し、新生児破傷風あるいは妊婦の産褥(さんじょく)性破傷風として発症するケースや、消化管などの手術時に感染するケースもあります。

 傷口から感染する破傷風は、特にアフリカ、東南アジア、中南米などの途上国で、不適切な傷の手当や予防ワクチンの不足などが原因となって、多くの発症者が出ています。

 日本では、1953年から破傷風トキソイドワクチンの任意接種が開始され、現在では三種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)と二種混合ワクチン(ジフテリア破傷風)の定期接種が実施されていますので、1950年ころは年間数千人いた発症者は年間50〜100人程度にまで減少しています。

 現在の発症者は、予防接種を受けている若年層では少なく、予防接種を受けていない人や、予防接種による免疫が消失した高齢者で多くなっています。前回の接種から10年以上経過している人には、1回の追加接種が勧められます。

 潜伏期間は3日〜3週間で、通常10日前後で発症します。一般に頭部、顔面の傷で起こる場合は、下肢の傷に比べて潜伏期が短い傾向があります。

 症状は頭痛、全身倦怠(けんたい)感で始まり、やがて口が開けにくい、首筋が張る、寝汗をかくなどの症状が現れます。次いで口が開かなくなり、手足にもこの硬直感が広がります。そして顔面の筋肉がけいれんして、泣き笑いのような表情である痙笑(けいしょう)を示します。

 けいれんが首や背中の筋肉に及ぶと、体が後ろへ弓なりに曲がる後弓反張(こうきゅうはんちょう)を起こします。筋肉のけいれんはわずかな刺激によって誘発され、頻回に起こると心臓が衰弱します。また、呼吸筋のけいれんが起こると、呼吸ができなくなって危険です。

 発症後の治療は難しく、死亡率は一般に30パーセント以上で、高齢者ほど重くなります。また、一般的に感染から発症までの時間が短いほど、開口障害から全身けいれんまでの時間が短いほど、高い死亡率を示します。

破傷風の検査と診断と治療

 破傷風は治療が遅れると全身けいれんを引き起こし死に至る感染症ですので、すぐに病院の救急部門、あるいは外科、内科を受診します。全身的な筋肉のけいれんが認められる場合は、救急車を呼びます。

 開口障害や痙笑の症状から、歯科や耳鼻科を受診するケースが多く、顎(がく)関節症などと誤診されることもありますので、注意が必要です。

 診断は症状からつけられるもので、傷口からの破傷風菌の検出によるものは30パーセントにすぎません。

 治療では、速やかに破傷風ヒト免疫グロブリン(抗毒素血清)を注射して毒素を中和し、ペニシリンを注射して残っている破傷風菌を減らします。さらに、傷口の消毒、壊死(えし)組織の切除、砂粒や金属片などの異物の除去、気道確保、抗けいれん剤の投与を行います。

 呼吸筋のけいれんにより呼吸ができない場合は、静かで暗い病室に入れて酸素吸入をします。なるべく強化看護病棟(ICU)での呼吸、血圧の管理が望まれます。神経に結合した毒素の作用が低下すると、回復に向かいます。

 予防、あるいは外傷に際しての破傷風予防には、破傷風トキソイドワクチンによる予防接種をしますが、外傷の場合は破傷風免疫グロブリンの投与も考慮されます。

 発展途上国など海外の流行地に滞在する際には、けがをしないように心掛けます。裸足で川遊びなどをしたり、誤って物を踏んだ時に足に傷を負ったり、運動中や交通事故、動物にかまれてけがを負った時などに、感染が多くみられるからです。

 万一、けがをした場合は、まず水で傷口を洗い流し消毒します。次いで、破傷風菌は空気に触れない状態を好む嫌気性菌であり、傷口がふさがると増殖しますので、不用意に傷を閉じたりせずに、早めに医師に相談します。

 発展途上国の不衛生な医療施設では、抜歯や出産、手術などの医療行為で感染することもあります。長期に滞在する場合は、安心できる医療機関を確認しておきます。