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スポロトリコーシス

 

真菌の一種の感染によって、皮膚と皮下組織に潰瘍性の病変を生じる疾患

 スポロトリコーシスとは、スポロトリックス・シェンキーという真菌の一種が皮膚に感染して、皮膚と皮下組織に潰瘍(かいよう)性の病変を生じる疾患。スポロトリクム症とも呼ばれます。

 原因菌となるスポロトリックス・シェンキーは、枯木や土中など自然環境中に存在する二形性の真菌、いわゆるかびの一種で、特に熱帯や温帯地方に広く分布しています。

 日本では、晩秋から冬期に主に東北以南で、土と接触する機会の多い農業従事者、園芸業従事者や、土をいじって遊ぶ小児に発生します。関東、近畿、四国、九州地方に多くみられましたが、都市化が進んだ1980年前半を境に減少し、発生数は年間数十例以下と少数です。

 スポロトリックス・シェンキーが切り傷や擦り傷、刺し傷などの軽微な外傷を介して、皮膚内に侵入して発症するので、露出しやすい顔面、手、前腕などに好発します。下肢に発症する場合は、下肢を露出する春から夏にみられます。

 数週間から数カ月の潜伏期を経て、スポロトリックス・シェンキーの接種部分に一致して、紅色の小さなあせも(汗疹)様の赤いぶつぶつ(丘疹〔きゅうしん〕〉)や、小さなうみ(膿疱〔のうほう〕)を形成し、次第に増大して、皮下組織に硬い浸潤を触れる皮下結節(しこり)となります。この結節は自潰しやすく、病変中央部で慢性の潰瘍を形成します。

 軽度の痛みを伴う場合がありますが、そのほかの自覚症状はありません。

 皮疹が単発して徐々に増大する限局型、リンパ管に沿って上行性に多発するリンパ管型、原発巣から血行性に全身汎発(はんぱつ)性の皮下結節がみられる播種(はしゅ)型のほか、骨・関節や肺など皮膚以外の臓器に発生する型に分類されます。

 限局型は、小児の顔面や上肢などの外傷部位に多く発生し、リンパ管を介しての転移は認められず、肉芽腫(にくげしゅ)性結節を示します。

 リンパ管型は、成人の手や指、前腕などの外傷部位に多く発生し、腫瘍(しゅよう)状、あるいは肉芽腫状に盛り上がって潰瘍を伴う結節が原発巣として生じ、その後、飛び石状にリンパ管を介して、上行性に連続して結節状の転移巣を示します。

 日本における深在性皮膚真菌症としては、スポロトリコーシスが最も発生率が高くなっていますが、人から人への感染は原則としてありません。放置すると数年にわたって悪化し、普通は自然治癒に至りません。

スポロトリコーシスの検査と診断と治療

 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、真菌検査、病理組織検査を行い、補助的に皮膚反応を行います。

 真菌検査には、直接鏡検と培養検査があり、直接鏡検では、局所麻酔をして病変の一部をメスなどで採取して顕微鏡で調べるものの、菌要素を検出しにくい疾患です。培養検査では、条件により菌糸形と酵母形の二形性の集落が形成されます。

 病理組織検査では、一部の組織を培養検査に回すこともでき、最も確実な診断方法です。病変の一部を採取し、特徴的な菌要素の検出や、炎症を伴う慢性肉芽腫像などで確定できます。

 皮膚反応は、スポロトリキン皮内反応といい、菌の培養液で作った抗原液を皮内注射し、結核ツベルクリン反応と同じように皮内反応させて48時間後の硬結の程度をみるもので、直径10ミリ以上を陽性とします。まれに偽陰性もあるので、注意を必要とします。

 近年は、組織や分離菌からのDNA診断が、迅速で正確な菌同定法として利用されてきています。

 皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ヨウ化カリウムの内服と、使い捨てカイロを当てるなどの局所温熱療法を第一選択として行います。ヨウ化カリウムの内服が著効し、通常1~3カ月で治癒しますが、胃腸障害を生じやすいのが難点です。

 ヨウ化カリウムの内服が難しい場合は、イトラコナゾール(イトリゾール)やテルビナフィン(ラミシール)などの抗真菌剤の内服と、局所温熱療法を併用します。  外科的に病変を切除することもあります。