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過多剤併用

 

明らかにたいへんな量の薬を併用しているケース

 過多剤併用とは、臨床的に正当化される数を超える薬剤使用のこと。最近、医療界で問題になっています。

 高齢の患者は複数の疾患に罹患(りかん)している場合が多く、個々の疾患治療のために多剤併用(ポリファーマシー)となりますが、過多剤併用に陥っているケースもみられます。どれくらいが過多剤併用といえるかという絶対的な目安はないものの、明らかにたいへんな量の薬を飲んでいる人がいます。

 例えば、20種類、30種類の薬を併用しているケースもあります。3つ、4つの診療科にかかると、簡単に何10種類の薬を飲んでいるということが起こります。

 高齢者医療における薬物療法は、患者の身体的機能、経済的負担を考慮し、最小の投与量で必要かつ十分な効果を得るための処方構築が必要となります。必要最小量での薬物療法の実現には、患者個々へのきめ細かな薬学的管理が必要といえます。

 2009年には、国立保健医療科学院疫学部の今井博久部長らが、65歳以上の高齢者への使用を避けることが望ましい薬剤、投与量を少なめにすべき薬剤のリスト「高齢者に置いて疾患・病態によらず一般に使用を避けることが望ましい薬剤」を作成、公開しました。

 疾患や病態に関係なく一般に使用を避けることが望ましい薬剤46種類と、特定の疾患や病態において使用を避けることが望ましい薬剤25種類をリストアップ。高齢の患者の薬物療法に一石を投じたといえます。

 これは、米国で用いられている高齢患者の薬剤処方の基準「Beers Criteria」の日本版に相当するもので、リストは「臨床経験が豊富で老年医学や薬物治療などに詳しい」として選出した9人の医師と薬剤師が作成。副作用などの投与時のリスクが効果を上回ると考えられ、ほかに安全と考えられる代替薬がある薬剤を中心に掲載されました。

 今井部長は、「リストに記載のある薬剤を高齢者に使っている場合は、できるだけ代替薬に変更してほしい」としています。例えば、長期作用型ベンゾジアゼピン系薬は、高齢者が服用すると半減期が延長しがちで、転倒、骨折の原因になりやすいため、中・短期作用型ベンゾジアゼピン系薬を一定の用量以内で使用するべきとしています。

 高齢者に限らず、腎臓(じんぞう)機能障害(慢性腎臓病)、心不全、中等度以上の肝臓機能障害などの疾患のある患者にも、リストに挙げられた薬剤は注意して処方し、過多剤併用に注意する必要があると考えられています。

 また、高齢者に限らず、女性、入退院を繰り返している人、うつ病の人も、過多剤併用に注意する必要があると考えられています。

 女性は割と気軽に、病院にくるたびに違う症状を訴える傾向にあり、病院も医者も違うと、医者がたくさんの薬が出されていることに気付かないということになります。入退院を繰り返している人も、薬が増えていきます。うつ病の人も、いろいろな症状を訴える傾向にあり、「何とかしてください。薬をいくら使ってもいいので何とかしてください」といって、薬が増えていくことになります。

 過多剤併用を防ぐためには、複数の医師による薬剤提供をチェックする掛り付け医を持つことや、多数の専門医に掛かる患者の薬を一元管理をしてくれる掛り付け薬局を持つことも必要とされます。