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解離性同一性障害

 

2つ以上の人格が一人の中に存在し、それらの人格が交代で現れる疾患

 解離性同一性障害とは、2つ以上のはっきりと区別される人格が一人の中に存在し、それらの人格が交代で現れて独立した行動をする疾患。解離性障害の一つで、いわゆる多重人格障害とも呼ばれる疾患です。

 解離性障害は本人にとって耐えられない状況を、離人症性障害のようにそれは自分のことではないと感じたり、解離性健忘のようにその時期の記憶や意識、知覚を切り離し、思い出せなくして心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害ですが、その中で解離性同一性障害は最も重く、切り離した記憶や意識、知覚が成長して、別の人格となって表面に現れるものです。

 発症するのは12歳以前、多くは3〜9歳の幼児期であると考えられていますが、症状が明らかになるのは多くの場合、思春期以降、10歳代後半から20歳代で、特に20歳代の女性に現れやすく、成人女性が成人男性の3〜9倍多く、一人の中に存在する人格の数も女性で15 名、男性で8名と性差があります。

 原因ははっきりとわかっていませんが、幼児期に受けた心的外傷(トラウマ)やストレスが関係しているといわれます。心的外傷にはさまざまな種類があり、災害、事故、親や周りの親しかった人との死別、暴行を受けるなど一過性のものもあれば、肉体的虐待、性的虐待、長期にわたる監禁状態など慢性的に何度も繰り返されるものもあります。

 そのようなつらくて苦しい体験によるダメージを回避するため、精神が緊急避難的に機能の一部を停止させることが、解離性同一性障害につながると考えられています。

 解離性同一性障害の症状は、強くなったり、弱くなったりを繰り返しながら、一般には慢性に経過します。そして、過去の心的外傷の記憶が突然、かつ非常に鮮明に思い出されるフラッシュバックを契機として、症状が悪化し明らかになります。

 表面に現れるそれぞれの人格は、記憶や意識、知覚や自己同一性(アイデンティティ)の統合の失敗を反映しています。通常、その人本来の人格で、より受身的で情緒的にも控えめな人格と、より支配的、自己主張的、保護的、または敵対的で、時には性的にもより積極的、開放的な人格という、対照的な2つの主要な人格を持ちます。

 そのほかに小児や児童、思春期の人格を持つのが普通で、数名から数十名の人格を示します。数十名、あるいは百名以上の断片化した人格を持つ発症者は、長期にわたる肉体的虐待、性的虐待を幼児期に受けている可能性が高いと考えられます。二次的人格は、年齢だけでなく、性別、人種、好み、利き手、筆跡、使用言語、癖、家族などがそれぞれ異なることもあります。

 通常、出生して最初に持つ本来の人格である基本人格(オリジナル人格)と、ある時期において大部分の時間、心身を管理的に支配している人格である主人格(ホスト人格)とを区別します。

 基本人格が主人格である場合が最も多いものの、発症者によっては、基本人格が長期間にわたって休眠状態だったり、たまに短時間出現するだけだったりする場合もあるからです。その場合には、時間的にも、相互関係的にも、成長後に分離した人格である二次的人格が支配的であるという期間が、長期間、時には数年間以上続き、二次的人格が主人格であるということになります。

 それぞれの人格は、それぞれの機能を持っています。例えば、孤独な基本人格を保護し、慰める友人役であったり、基本人格の代わりに痛みや悲しみを引き受けたり、基本人格には許されないような積極さや活動性や奔放な性格を持っていたり、基本人格が戻りたい幼児期であったり、基本人格が持つには危険すぎる攻撃性や自殺衝動を持っていたりします。

 基本人格は二次的人格の言動についての記憶がないのが通例ですが、二次的人格はそれぞれの人格の間で、ある程度の共通記憶を持っていたり、主要な二次的人格は基本人格が優勢な時にも、ある種の共通意識を持っていたりします。

 人格の交代は、突然に始まり、時には極めて微妙、時には極めて顕著に交代します。人格の交代は、何らかの情緒的ストレスが引き金になって、あるいは他人の希望、要求や暗示によって誘発され、時には意識的に、時には自然発生的に起こります。

 二次的人格へ人格が交代している期間は、基本人格にとっては空白期間、つまり記憶喪失として体験されます。解離性同一性障害では、このような記憶障害は必発で、多くの場合は記憶喪失の期間は数分から数時間ですが、時には数日から数年におよびます。また、より長期の、心的外傷に関連した小児期の生活史に関する記憶喪失がみられることもあります。

 話し方や声が突然に代わったり、全く違う人格に変わるので、真っ先に家族が気付くと思われます。こうした兆候が何度もあり、日常の生活に支障を来すような場合は、精神科、神経科、心療内科の受診を考慮します。

解離性同一性障害の検査と診断と治療

 精神科、神経科、心療内科の医師による診断は、主に症状に基づいて行われます。

 症状が明らかになるのは多くの場合、思春期以降、10歳代後半から20歳代ですが、発症者本人や家族の情報から、あるいは医療記録から、12歳以前の幼児期の発症が確かめられることも少なくありません。

 見逃されたり、統合失調症精神分裂病)などと誤診されたりしやすいために、解離性同一性障害が幼児期に診断されることはまれなものの、幼児期に診断された発症者では、治療期間が成人の場合に比べて短いと見なされます。

 精神科、神経科、心療内科の医師による治療は、通常の薬物療法を主体とした保険診療では対応が難しく、精神療法を主にして治療することになります。

 解離性同一性障害の発症者の多くが、うつ気分、自傷行為、自殺行為、攻撃的行動、気分障害、アルコール・薬物依存症、摂食障害睡眠障害、性障害、境界型人格障害など多彩な精神症状、身体症状を合併し、極めて不安定な状態です。ほとんどの発症者が幼児期に肉体的虐待、性的虐待を受けていますから、他人を信頼する能力に欠けています。

 従って、治療では、安全な場所を確保し、多彩な精神症状や身体症状に対処しながら、基本人格だけでなく二次的人格とのコミュニケーションをとり、それぞれの機能や役割を整理し、複数の人格を一人にまとめることを目指します。

 その中で、医師との信頼関係を築き、必要に応じて個人精神療法、集団療法、家族療法、教育的治療、社会機能訓練、認知行動療法自助グループ抗不安剤・抗精神病剤・抗うつ剤による薬物療法などを組み合わせて行います。

 心的外傷で傷付いた体験をいやすには、相当な時間がかかります。主人格が怒りや自殺衝動、性的衝動などへの対処を学習し、人格が離れている理由がなくなり、人格を一人にまとめるにも、たくさんの困難があります。多くの場合、5〜6年を要する長期治療になります。