健康創造塾

各種の健康情報を発信

胃カルチノイド

 

カルチノイドという、がんに似た性質を持つ悪性腫瘍が胃に発生した疾患

 胃カルチノイドとは、カルチノイドという、がんに似た性質を持つ悪性腫瘍(しゅよう)が胃に発生した疾患。

 カルチノイドは、がんの意味であるカルチと、類を意味するノイドが組み合わさった英語で、日本語で「がんもどき」とも呼ばれます。

 がんと同様、カルチノイドはいろいろな臓器に発生します。小腸、直腸、虫垂、十二指腸、胃などの消化管のホルモン産生細胞に発生し、膵臓(すいぞう)、精巣、卵巣、肺、気管支、胸腺(きょうせん)のホルモン産生細胞でも発生します。

 このカルチノイドは、一般的には悪性度が低いと考えられています。実際、症状の進行もゆっくりで長期生存が期待できるものも多く、これらは定型カルチノイドと呼ばれています。一方、比較的早く症状が進行し治療が困難なものがあり、これらは非定型カルチノイドと呼ばれています。

 定型カルチノイドは非がん性、非定型カルチノイドはがん性と見なされます。頻度的には、定型カルチノイドのほうが多くみられます。

 胃カルチノイドの場合、その多くは胃体部の上皮内に広く分布しているホルモン産生細胞であるECL細胞(腸クロム親和性細胞様細胞)から、腫瘍が発生しています。

 ECL細胞は、十二指腸につながる幽門前庭部にあるホルモン産生細胞であるG細胞から分泌されるガストリンの刺激を受けて、ヒスタミンを分泌し、壁(へき)細胞の胃酸分泌を促す働きをしています。血清中のガストリン値が上昇する高ガストリン血症が、ECL細胞の腫瘍化に関与していると考えられています。

 血清中のガストリンはさまざまな胃の疾患や、胃酸を中和する制酸剤の使用により上昇しますが、胃カルチノイドの発生に関与していると考えられているのは、委縮性胃炎と、多発性内分泌腺腫症に合併するゾリンジャー・エリソン症候群。

 委縮性胃炎は、自己免疫異常によるA型胃炎と、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)感染によるB型胃炎に大別されます。特にA型胃炎では、抗壁細胞抗体により壁細胞が破壊されて高度に胃酸分泌が低下するため、分泌されるホルモン量を一定にするシステムにより、明らかな高ガストリン血症を示します。ガストリンの刺激を受け、胃底腺粘膜内にECL細胞の過形成が生じ、さらにECL細胞が腺管外に集合体を形成した内分泌細胞微小胞巣を経て、カルチノイドが形成されると推測されています。

 多発性内分泌腺腫症は、副甲状腺膵臓、下垂体に腫瘍が発生する常染色体優性遺伝性疾患です。ゾリンジャー・エリソン症候群は、膵臓や胃・十二指腸壁に発生したガストリンを産生する細胞の腫瘍(ガストリノーマ)によって起こる疾患です。

 現在、胃カルチノイドは、高ガストリン血症の基礎疾患により、A型胃炎に伴うもの、ゾリンジャー・エリソン症候群に伴うもの、 ガストリンとは無関係のものの3タイプ分類されています。

 これらの頻度は、A型胃炎に伴うものが35パーセント程度、 ガストリンとは無関係のものが50パーセント程度で、ゾリンジャー・エリソン症候群に伴うものはその基礎疾患自体がまれなため、極めて少数であると見なされます。

 血清中のガストリン値が高いA型胃炎に伴うものと、ゾリンジャー・エリソン症候群に伴うものの症状としては、腹痛、消化管出血、胃逆流、胃酸欠乏、貧血、体重減少などが認められます。

 なお、胃に発生したカルチノイドは、セロトニンを始め、ヒスタミン、ブラジキニン、プロスタグランジン、カテコールアミンなどのホルモン様の生理活性物質を産生します。この生理活性物質は血液中に放出され、直接肝臓の門脈に入り、肝臓の酵素によって破壊されます。そのため、胃にカルチノイドができても、一般的には肝臓に広がらなければ症状は現れません。

 肝臓に広がった場合は、肝臓はこれらのホルモン様物質が全身を循環し始める前に破壊できなくなります。腫瘍が放出する物質によって、カルチノイド症候群と呼ばれる種々の症状が現れることがあります。

 カルチノイド症候群は腫瘍がある人の10パーセント以下に現れ、顔や首に出る不快な紅潮は最も典型的で、最初に現れることが多い症状です。血管拡張による紅潮は、感情、食事、飲酒、熱い飲み物によって起こります。紅潮に続いて、皮膚が青ざめることがあります。

 セロトニンに起因して腸の収縮が過剰になると、腹部けいれんと下痢を生じます。腸は栄養を適切に吸収できないため栄養不足になり、脂肪性の悪臭を放つ脂肪便が出ます。心臓も傷害を受けて、下肢がはれます。肺への空気の供給も妨げられて、気管支ぜんそくに似た発作や息切れが現れます。セックスへの興味を失ったり、男性では勃起(ぼっき)機能不全になることもあります。

 胃カルチノイドのリンパ節転移は、腫瘍の大きさの増大とともに率が高くなり、1センチ以下では10パーセント以下、1~2センチで20数パーセントとなります。また、粘膜下層に浸潤した腫瘍では、胃がんと同様に15パーセント前後のリンパ節転移を認めます。

 最近は、健診などの胃透視や胃内視鏡で、胃カルチノイドの無症状の小病変が発見されるケースが多くなっています。

胃カルチノイドの検査と診断と治療

 消化器科、内科の医師による診断では、症状から胃カルチノイドが疑われる場合は、尿を24時間採取して、尿中のセロトニンの副産物の1つである5ーヒドロキシインドール酢酸(5ーHIAA)の量を測定し、その結果から判断します。

 この検査を行う前の少なくとも3日間は、バナナ、トマト、プラム、アボカド、パイナップル、ナス、クルミといったセロトニンを豊富に含む食べ物を避けます。ある特定の薬、せき止めシロップによく使われるグアイフェネシン、筋弛緩(しかん)薬のメトカルバモール、抗精神病薬のフェノチアジンなども検査結果の妨げになります。

 腫瘍の位置を突き止めるには、放射性核種走査が有効な検査です。カルチノイドの多くはホルモンのソマトスタチン受容体がありますので、放射性ソマトスタチンを注射する放射性核種走査によって、腫瘍の位置や転移の有無が確認できます。この方法で約90パーセントの腫瘍の位置がわかります。

 CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、動脈造影も、腫瘍の位置を突き止めたり、腫瘍が肝臓に転移していないかを確認するのに役立ちます。

 消化器科、内科の医師による治療では、腫瘍が胃の部分に限定していれば、外科的切除が原則となります。

 A型胃炎に伴うもの、 ゾリンジャー・エリソン症候群に伴うものの場合、腫瘍径1センチ以下あるいは個数3~5個以下であれば内視鏡的治療、それ以上であれば幽門前庭部切除と局所切除を行います。最近では、予後良好なA型胃炎に伴うものに対しては、無治療で経過観察されることもあります。

 散発性のガストリンとは無関係のものの場合、リンパ節全体を切除するリンパ節郭清(かくせい)を含めた胃切除を行います。

 進行した場合、一般のがんと同様に放射線療法や、抗がん剤による化学療法を含めた集学的治療を行います。ストレプトゾシンにフルオロウラシル、時にはドキソルビシンなどの抗がん剤の併用によって、症状を緩和できることがあります。オクトレオチドも症状を緩和し、タモキシフェン、インターフェロンアルファ、エフロルニチンは腫瘍の増殖を抑制します。

 A型胃炎に伴うものは、肝臓やリンパ節への転移率が低く、腫瘍関連死亡はほとんどなく予後良好です。これに比べて、ガストリンとは無関係のものは、予後不良とされます。