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亜急性硬化性全脳炎

麻疹ウイルスに感染後、5~10年の潜伏期間を経て発症する脳炎

 亜急性硬化性全脳炎とは、はしかウイルスともいわれる麻疹(ましん)ウイルスに感染後、5~10年の潜伏期間を経て発症する脳炎。SSPE(Subacute Sclerosing Panencephalitis) とも呼ばれます。

 数年の潜伏期間を経て発症後は、亜急性の経過、すなわち数カ月から数年の経過で神経症状が進行します。通常のウイルス感染が数日から数週の間に発症するのに対し、このように潜伏期間が著しく長く、ゆっくりと進行するウイルス感染を遅発性ウイルス感染と呼んでいますが、その代表的な疾患の一つです。

 麻疹にかかった人の数万人に1人が発症し、現在、日本国内に150人くらいいると見なされています。以前の年間発症者数は10〜15人くらいでしたが、麻疹ワクチンの普及後は減少し、最近では5〜10人。好発年齢は小学校児童で、全体の80パーセントを占めています。

 治療法は確立されておらず、現在でも予後が悪いため、厚生労働省の事業の一つである医療費助成制度の適応疾患となっており、医療費の助成を受けることができます。

 亜急性硬化性全脳炎は、脳内で潜伏している間に変異した麻疹ウイルスが原因と考えられています。この変異した麻疹ウイルスは、亜急性硬化性全脳炎ウイルスと呼ばれ、麻疹ウイルスとは区別されています。亜急性硬化性全脳炎ウイルスを構成する蛋白(たんぱく)質に遺伝子変異がみられ、ウイルス粒子の形成や放出に欠陥があることがわかっています。

 初発症状は、行動の変化、学力の低下、性格の変化、意欲の低下、歩行異常などであり、言葉をしゃべらない、目がよく見えないなどの症状が現れてきます。数カ月を経て、けいれん発作、手足の痙性(けいせい)まひ、不随意運動、てんかんなどが起こり、次第に手足が硬くなってきます。

 次いで、体や手足を突っ張るような症状を現し、発熱などに伴って意識障害が強くなり、多くの発症者は失明を起こし、昏睡(こんすい)状態で死亡します。

 通常、数カ月から数年の経過で症状が進行しますが、中には急性あるいは慢性に経過するタイプもあります。

 麻疹にかかったことがあり、学業成績が急速に低下したり、性格に著しい変化がみられた時には、亜急性硬化性全脳炎が疑われます。知能低下や性格変化は、心因反応、登校拒否、脳腫瘍(のうしゅよう)、脳代謝性疾患などでも起こるので、小児科、神経内科などを受診することが勧められます。

亜急性硬化性全脳炎の検査と診断と治療

 小児科、神経内科の医師による診断では、血清および髄液検査を行い、亜急性硬化性全脳炎に特徴的な麻疹抗体価の上昇を証明します。髄液中の免疫グロブリンG(IgG)の量が増えていることが証明されれば、診断的意義は高いとされます。

 脳波検査を行うと、けいれん発作を起こす時期では、周期性同期性高振幅徐波結合と呼ばれる特徴的な脳波所見を認めます。

 CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査では、特徴的な変化はありませんが、大脳皮質下や脳室周囲の白質に軽度の病変がみられたり、進行すると次第に脳全体が委縮して小さくなっていきます。

 小児科、神経内科の医師による治療法では、特に有効な薬はないため、主に対症的な治療法に限られているのが実情です。ワクチン接種により麻疹にかからないようにすることが最も重要です。

 最近ではさまざまな治療法が検討されており、抗ウイルス剤やインターフェロンなどの脳内投与によって、5年以上生存する例もあります。また、C型肝炎の治療薬であるリバビリンという抗ウイルス剤の脳内投与も試みられています。